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叔母のこと

 年末に脳血栓で倒れ、意識不明のまま病院に運ばれた叔母について。

 両親とも大家族なので、私には大勢の叔母、叔父が大勢いる。
大勢いると近い人と遠い人、顔も知らない叔父、叔母もいるのだが、
先日、脳血栓で病院に運ばれた叔母には幼い頃からずっと付き合ってもらっている。
幼い頃どころか、大雪の日の難産のとき姉である母親に付き添ってくれたのが、当時高校生の叔母だった。

 つまり自分が産まれたときに立ち会ってくれた人。
叔母ではあるが今でも「まっちゃん」と呼んでいる。ずっと姉のような存在だった。
そのまっちゃんは十人兄妹のうちで唯一、恋愛結婚をした人だ。
婚約中の伯父とのデートに子供だった自分はよくお邪魔虫をした。
田舎者ばかりの中で都会的な雰囲気のまっちゃんことは好きだったし、
まっちゃんも随分と可愛がってくれた。
結婚式のときもよく憶えているが、父親が長期不在なのが最適だったのだろう、従弟を産むときに我が家に滞在たことがあり、勉強も見てもらったことを思い出す。
一番ありがたかったのは、自分が高校のときフラフラしているのを、出産のとき苦しんだ母親のことを手紙にして、たしなめてくれたことなのだけど。

 しかし勤め人だった伯父が身体を壊して職を失うと、一念発起して墨田の玉ノ井で焼鳥屋を開業。
玉ノ井は昔遊郭が軒を並べた「ぬけられます」の赤線地帯。
都会的センスに溢れたまっちゃんがいきなり下町向島の焼き鳥屋の女将となった。
たまにそのことをぼやいていたが、夫婦は懸命に激務をこなしていたと思う。
その甲斐もあって常連客もついて、店は繁盛して増築もした。
早くも開業して35年を超えた。従弟も立派に二代目として厨房に立っている。
身内の贔屓目としても、この店のつくねは大変美味い。
軟骨からレバーまで肉の旨味をギュッと凝縮して、ここのつくねを味わってしまうと、ちょっと他のは食べられないんじゃないだろうか。

 残念なことに伯父もまっちゃんも身体が丈夫とはいえず、
二人して交互に病院に担ぎ込まれることもしばしばで、危篤の報せを受けたこともあった。
血管病は母方の家系病で、母親も十年前に大きな手術をして人工動脈が埋められているが、まっちゃんが病院に運ばれるのは今回で三回目だ。

 今夜、BSの人気番組「吉田類の酒場放浪記」でまっちゃんの店が紹介された。
画面の中で手製のぬたを「ワカメとネギと鮟肝で和えて・・・」と吉田類に差し出すと、
「味が練れている。練れているということは味が洗練されている。こういうのが下町の奥の深いところ」との評価を貰って、何とも嬉しそうだった。
これ、いつの収録だったのだろう。
まっちゃんも伯父も従弟もオンエアを楽しみにしていたことだろう。
画面のまっちゃんと病床のまっちゃんとがオーバーラップして、
一層、急の病魔が本当に恨めしくてならない。

 見舞いに行ったとき、伯父がスプーンで流動食をまっちゃんの口に運んでいた。
夫婦水入らずの機会もそうはなかったろうから、何十年ぶりかのお邪魔虫だ。
まだ70前なのだからこれから辛いリハビリにも耐えてくれることだろう。

 身内のことながら「頑張ろう!」の一言を。

author:ZAto, category:戯言, 23:59
comments(4), trackbacks(0), pookmark
Comment
ザトさん、こんにちわ。

一日も早く叔母さんが良くなればいいですね。
リハビリは辛くて大変ですね。
まだ70前だったら大丈夫でしょう、きっと。

そういえば、吉田類の酒場放浪記は昔からよく見てます。
また、連ドラという形で予約してます。
因みに、おんな酒場放浪記も面白いです。

今日、明日は黒服を着なければなりません。
しんじろう, 2013/01/26 2:27 PM
こんばんは。

吉田類の「酒場放浪記」は面白いですよね。
叔母も収録の時はニコニコ元気だったのに、
オンエアの時には入院で悔しかったことでしょう。

ご身内に不幸があったようですね。
この歳になるとこれからそういう機会も増えていくでしょうから、辛いものです。
そうはいっても親戚縁者を順番に送っていくのは務めですから、変な順番で送られるようなことのないようにしないといけません。

しん兄ィもお身体には気をつけて。


zato, 2013/01/27 4:07 AM
 友人が親戚がといろいろある齢になりましたね、我々は。
 自分が脳出血起こしたときは実は脚のコントロールが利かなくなっているのに「大したことない、大丈夫だ」と無意味無根拠に思っていて、母が「大丈夫なわけないじゃないか」と動いてくれたおかげで、対処も早く本当に大したことなくすみました。「スピードが命なんだよ」というオシムの言葉は本当でした。
 叔母さまも三度目なら落ち着いて早く対処なさったかと思います(どこにも同じ症状でとは書いてありませんが)
 ただ大丈夫だ、大したことないと思っていたのはかなり重要なことで、大丈夫、大したことないんだから、こんなことできないわけがない。そう思っていたからリハビリにも積極的に臨めましたし進捗も早かったと思います。
 叔母さまにもきっとかくあられんことを。
 わたしがいうのもなんですが、あまり無茶をしないようにしましょう。そして老衰で死にましょう。
イングラム, 2013/02/09 10:45 AM
こんにちは、ここんとこ冷えてますが、身体は大丈夫かな。
季節の変わり目は体調に気をつけてなんていいますが、
冬から春へ、春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へ、
その間のどっちつかずの気候が何十日もあることを思うと「季節の変わり目」じゃない季節の方がむしろ少ないのかもしれません。

オシムの言葉がサッカーについてなのか脳梗塞についてなのか、両方に引っ掛けたのかわかりませんが、昔の上司、今の職場、叔母と、現在進行形で脳梗塞でのリハビリをやっているのが三人も身近にいるので、「スピードが命なんだよ」は頭の片隅に入れておきます。
入院もリハビリも経験がないですが、「大丈夫、大したことないんだから、こんなことできないわけがない」も戴いておきます。

まあ我々も知り合ってからの時間をそのまま足し算すると還暦を超えてしまうわけですが、
さらに歳をとって病気にかかる危険性が増していくのに反比例して、
生きれば生きるほど自分の葬式がしょぼくなっていくんでしょうな。
老衰まで持ち込むにはお金と環境かなと思うと、どちらも積んでないですからねぇ。
ただ首都直下型地震で死んでたまるかという思いはあるんですけどね。
zato, 2013/02/09 11:25 AM









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