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『 中島みゆき 縁会 2012〜3 』 〜東京国際フォーラム
 
 5、000席を上回る大ホールの二階席の後ろから3列目というステージを見下ろす席で、新調したばかりで慣れない遠近両用眼鏡の焦点を合わせるのに無駄な苦労をしたこと、舞台セットがブロック状に高く積まれたボックスでのバンド演奏のため、サウンドがやけに近くに感じられ、アップテンポの曲は中島さんの歌とバンドが喧嘩しているようで多少耳障りだったことは最初に書いておこうかと思う。
『最後の女神』 『地上の星』 『恩知らず』 『パラダイスカフェ』はとくに残念だった。
そのためかスローな曲ばかりがやけに心に残ったコンサートになった。

中島みゆき 縁会2012
 
 さて、晩秋恒例となっている中島さんのライブ。
「 「夜会」という舞台がありますが、あれと違って通常のコンサートの方はいつも宴会気分でやっていこうと思っとります。いっそツアータイトルも 「宴会」 にしまえと考えたんですが、一升瓶を持ってこられても困りますんで 縁が会うと書いて 「縁会」 としてみました」 と、例によってあの凄まじく脱力したトークを炸裂させる。

 五年連続となる。もはや時間の流れる早さを茫然と見送るのみだ。
誰かが言っていた。「時間が早く感じられるのは、あなたが遅くなったからだ」と。
確かにそういうこともあるのかもしれない。
例えば前回のコンサートよりも東京国際フォーラムの喫煙所がずっと縮小されて、満員電車状態になっていたことや、終了後のロビーに貼り出されたセットリストに群がっていた携帯電話がスマホになっていたなんて違いにも小さな時の変遷を感じる。
しかし五年なんてケチな話ではなく、今夜のセットリストの内、彼女が二十歳そこそこで作った 『時代』 を歌い、還暦を迎えて発売した 『恩知らず』 を歌う。
休憩後のお色直しでは黒のドレスでJAZZYにブルース3曲を披露するが、『真っ直ぐな線』 と 『悲しいことはいつもある』 という二十歳代の楽曲の間にニューアルバムから 『常夜灯』 を挟む。
40年ほどの時間を一夜のコンサートでパッケージされてもまったく違和感はない。
中島みゆきの世界観が二十歳代で既に完成され、成熟していたともいえるし、
『時代』 『化粧』 『世情』 という楽曲がすでに不変の価値を持っているのかもしれない。
しかし『世情』 などは「めぐるめぐるよ時代はめぐる」で、そういう社会情勢になってしまったともいえるわけで、それを聴いている自分自身に流れた時間も含めて、改めて40年という時の流れを考えてしまった。

 『世情』 が今回歌われるのはネットの書き込みで知っていた。
スポーツ紙にも “中島みゆき27年ぶり「世情」!2年ぶり全国ツアーで披露”と載った。
中島さん26歳のアルバム 『愛していると云ってくれ』 に収録されていた曲。
これが一曲丸々 『3年B組金八先生』 に使われて有名になったことは知っていたが、
実は十年くらい前にビデオで初めて観た(何せ金曜夜8時といえばプロレスだった)。
なるほど、公にはもうシュプレヒコールが失われていた時代に、それでも個の中にその衝動はあるのではないかという「声なき声」を代弁した(と勝手に思っている)『世情』 も、こういう使い方があるものだと感心してしまった。
「この曲を書いて歌っていた頃と比べて本当に世の中変わりました。でも変わらないものは何も変わっていないんだと思います」と語りから入った 『世情』。
今回のコンサートにメッセージ性を見出すのならこの瞬間だったのではないか。
確かに、かつての「公」から「個」へと向けられていた曲が、再び「公」へと回帰することになった今の世情は、作られた当時よりも圧倒的に暗くなっている。
しかし 『世情』 で歌われた主人公みたいに、誰もが闇雲に突き進めるわけではない。
休憩前に歌われた 『風の笛』は、我慢し続けている人々への応援歌になっている。
この曲に、まるで初めて 『ファイト!』 を聴いたときのような共感を覚えてしまった。
『風の笛』 はニューアルバムに収録されている曲だが、またひとつ中島さんから名曲が生まれたことを実感する。
中島さんは応援歌という評価に違和感があるというが、激愛から慈愛へと深めていく中島みゆき史の中で、それらの曲に私自身も共感し、癒されているのだ。
同じ脈絡に 『倒木の敗者復活戦』 という新曲もあり、このニューアルバムは結構いい。
何度も聴いて馴染みのある曲をライヴで聴けるのは楽しいが、こうしてまだ耳馴染んでいない曲をライヴで認知していく作業もまた格別ではないか。



2012.11.15 東京国際フォーラム ホールA



author:ZAto, category:舞台・ステージ, 19:17
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