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映画 『 のぼうの城 』

のぼうの城

 北条征伐を天下統一の仕上げと定めた豊臣秀吉から「武州・忍城を討ち、武功を立てよ」と命じられた石田三成は、五百人の兵が残った忍城に対し二万超の軍勢を率いて攻める。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった。そして城は簡単に落ちるはずだったのだが・・・。

 映画は原作の良いところも悪いところもそのまま反映された。
だから映画の感想が、原作の感想とかぶらないようにしなければならない。
別に原作と比べてどうのこういうつもりはないが、もともと和田竜の小説は城戸賞を受賞した脚本(まだ存在していたのか、この賞・汗)の書き起こしだったので、原作と映画化の関係性からすれば、そのまま反映されるのは当然の結果なのだろう。
和田竜の小説『のぼうの城』は歴史小説として人物の掘り下げも深みも物足りないものだったが、映像を想起させるスケール感があった。
しかしそうなると小説の読者が脳裏に思い浮かべた映像との勝負になる。
これはかなり製作者にとってハードルの高い話だ。
なにせ読者の頭に浮かぶ映像には予算の上限もなく、もの凄い豪華キャストが可能になる。
別に俳優だけではない。昔の担任教師だったり、親戚のおばちゃんだったりするのだから、これはかなり強敵だ。

 監督は犬童一心と樋口真嗣のW演出。犬童一心は自分世代の映画青年にとっては8mmですでに有名人だったが、PFF出身の映像作家として大きな映画に起用されるなど、かなり成功した監督なのだろう。
しかし樋口真嗣の名前は前面に出してほしくなかった。
これで「本作はふんだんに特撮とCGを使ってますよ」とバラしてしまったようなもの。
別にこの時代に古き良きハリウッドばりに映画会社が社運を賭けるような大スペクタクルを望むほどアナクロではないし、今時CGを一切使わない映画の方が珍しくなっているのは知っているにしても、初めからCGありきだと思わせてしまうのは非常に白ける。
『ガメラ』や『日本沈没』なら許せるものが、戦国絵巻でこういうウリはないと思うのだ。
その石田三成の忍城水攻めの特殊撮影の場面は思っていたほどでもなかった。
それほど東日本大震災での津波映像が強烈だったこともあるが、総じて全体的に特撮映像に厚みがなかったように思ったのは私だけだろうか。
ただ私はクリエーターの出来不出来で、映画をどうこう評価するつもりはない。
たとえこれがびっくりするぐらいの迫力満点の映像だったとしても、所詮はCGじゃないかとしか思っていないからだ。
・・・何だか映画がどんどんつまらなく思えてきて困ったものだ。

 原作の成田長親が巨漢のでくの坊と説明されていたこともあって、成田長親に野村萬斎という配役はピンとこなかった。さらに石田三成の上地雄輔も大谷吉継の山田孝之もないと思っていた(あとの配役はまぁこんなものだろうなと)。
ところが野村萬斎ののぼう様は完全にはまった。
少なくとも原作を読みながら頭に描いていた長親像は完全に裏切られた。
こういう裏切りは大歓迎だ。
自ら敵の的となって場外の農民を鼓舞する田楽踊りはこの物語のクライマックスだが、これはもう狂言師・野村萬斎の本領が発揮され、説得力も十分だ。
滑稽芝居はもともとお手のものだが、何よりも口跡が素晴らしく、後半は少々二枚目過ぎた感はあったものの、映画にとって何者にも代えられない存在感で、体躯の違いなど実にくだらぬことだったと納得させられる。
更に三成と吉継を演じた上地雄輔と山田孝之もあまりにも良くてびっくりした。
実はこの『のぼうの城』という物語は長親のワンマンショーではあるが、後味の良さを支えていたのは三成と吉継の存在だ。
彼らをステレオタイプの敵将に描いてしまうと、戦国武将の潔さが台無しとなるどころか、対する坂東武者たちの心意気も半減してしまうところだった。
どちらかといえば一本気な忍城側と比べ、何かと屈折している三成の青さを上地はよく演じたと思うし、その三成を諌めながらも魅かれてゆく吉継の葛藤を抑えた芝居で山田も健闘していたのではないか。

 オープニングの秀吉による備中高松城の水攻めでのあんまりなチープな画面作りを見て、おいおい大丈夫かいなと案じてしまったものの、全体的には満足の行く出来ばえだったのではないだろうか。

 何年前、関が原の合戦場を訪ね、三成と吉継の陣営を見て回ったときに、ともに討ち果てた二人の武将に古えの思いを馳せたものだったが、それよりも以前にこの二人が埼玉県の北部でここまで大規模な合戦を仕掛けていたことは『のぼうの城』を読むまではまったく知らなかったことだ。
石田堤など名残りの史跡がエンディングで紹介される。
以前、仕事で行田市にも何度か足を運んだものだったが、もしかしたら私も忍城ゆかりの佐間口や長野口という交差点を通過していたのかもしれない。



2012.11.9 TOHOシネマズ スカラ座


author:ZAto, category:映画, 01:26
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