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映画 『 アウトレイジ ビヨンド 』

 「北野映画」がブランドに昇華していく過程と、私が映画館から遠のいていく過程が重なってしまい、北野武監督作品を劇場で観た本数はそれほどでもない。
監督デビューの『 その男、凶暴につき 』 『 あの夏、いちばん静かな海。』 『 BROTHER 』 『座頭市 』 くらいか。
しかし 『 座頭市 』 は今一つ感心しなかったが、たかが4本ほどの北野映画体験ではあってもどれも強烈な印象が残っている。
何というか、自分の中で熟成してしまった「娯楽映画の定義」というものが微妙にズラされていく居住まいの悪さとでもいうのか、こうくればああなるだろうという決めつけが嵌ってくれない不快感と驚きみたいなものが常にあった。
簡単にいってしまうと北野映画は先読みが難しいこともあるが、別にストーリー展開の予測が出来ない映画を撮り続けているというよりも、カットからカットへと移行する編集のリズムが既成の映画概念では測れないオリジナリティに満ちているのは強く感じていた。

アウトレイジ

 しかし今回 『 アウトレイジ ビヨンド 』 で十年ぶりに北野映画を観て思ったのは、かなりこちらの予測通りに映画は流れて行きつつ、娯楽映画の常道からそれほど外さないまま、一定の高揚感は獲得していたということだった。
確かに 『 その男、凶暴につき 』 から23年。北野武も立派なベテラン映画監督だ。
変な書き方だが「こういう常道も行けますよ」と、満天下に知らしめるためにこれを撮ったのではないかと気さえする。

 もちろん常道ではあるが、『 アウトレイジ ビヨンド 』 は決してやくざ映画の王道ではない。
このジャンルを浴びるほど観てきた私にとって、このやくざ映画はやはりひと筋縄ではいかないものは感じる。
やくざ映画は鶴さん、健サン、お純さんの任侠ものは当然として、深作欣ニの実録ものであっても徹頭徹尾ウェットな世界だった。それは『 仁義なき戦い 』 然りで、かなりドライな領域に踏み込んだ『仁義の墓場』 であっても、プログラムピクチャーの枠組みの中でのスター映画だった。
変な話、私はやくざ映画で涙ぐむことはあっても、恐いと思ったことは一度もない。
その時点で東映や日活のやくざ映画はバイオレンスを描いていたとしても生の「暴力」を感じさせる映画ではなかった。
『 仁義なき戦い・代理戦争 』で川谷拓三が手首をぶった斬るというショッキングな映像も、痛みよりも「拓ボン、阿呆や」という場内の笑いの中に埋没され、あのムーブメントの「祭り」の余興に過ぎなかったのではないだろうか。
やくざ者に追い詰められていく恐怖感は、やくざ同士が抗争を展開する段階で相殺されてしまう。だからやくざ者が恐ろしいと思わせる映画は、ジャンルの違う映画にやくざが登場するときであって、決してやくざ映画ではなかった。
それは 『 アウトレイジ ビヨンド 』 で西田敏行や中尾彬がいくら凄んだ芝居をしたところで、「おっ、やってんな」と思うだけでリアリティは感じることが出来ないのと同じ脈絡であり、今まで北野映画に感じていた居住まいの悪さや、嵌ってくれない不快感を殆んど感じさせないまま映画は112分を駆け抜けたという感じではある。

 その点で既成の北野映画のファンはある種の物足りなさを感じるのかもしれない。
確かに(ビデオでの鑑賞だが)『3―4×10月』でベンガル扮するやくざが堅気に追い込みをかける場面の得も言われぬ恐怖感を描き切るセンスに感心した人たちには 『 アウトレイジ ビヨンド 』 は普通のやくざ映画なのかもしれない。
しかしやくざ映画のウェットな「祭り」に身を置いていた私には、このカラカラに乾いたドライさはやはり異様な世界観ではあった。
現実問題、今、暴対法でがんじがらめにされている暴力団が衆人環視の中で派手にマシンガンをぶっ放すなどはファンタジーの世界ではあるのだが、例えばバッティングセンターでチンピラが堅気の若者に嫌がらせをする場面などは北野武の独壇場ではなかったか。キャンキャン吼えまくる加瀬亮の不快指数満点の芝居と併せて、それが徹底的にドライに行われることでストレスが蔓延していくリアリティは特筆すべきだろう。

 もう一度言うがこの映画はやくざ映画の常道ではあるが、王道ではない。
まぁ北野映画あるという前提で、それは当たり前のことでもあるのだが、常に過去の北野映画の既成概念が求められのは、北野武にとってもあまり幸せなことではいだろう。その意味ではファンや評論家たちの中で北野映画の王道は作られているのかも知れないが。



2012.10.13 TOHOシネマズららぽーと横浜


author:ZAto, category:映画, 23:59
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