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映画 『 天地明察 』

 冲方丁の原作を読みながら、これは絶対に映画化されると確信していた。
それくらい面白い時代小説だった。
おそらく「本屋大賞」が発表された段階で映画化権の争奪が始まったと思うが、
そこは角川映画。もともと単行本は角川書店なので、映画化までの流れは早い段階で想定されていたか。
その意味で 『おくりびと』 のように滝田洋二郎側からの持ち込み企画だとは思いにくく、会社依頼を引き受ける形で撮った映画に違いない。
スケールからしても少なからぬバジェットを必要とされるので、映画化には一定のポテンシャルが要求される。
滝田の職業監督としての手腕が問われる映画化だといえるだろう。

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 泰平の世。星を眺めるのが何よりも好きで、算術にもたけていた安井算哲は碁打ちとして徳川家に仕えていたが、会津藩主の保科正之の命を受け、北極出地の旅に出ることになる。算哲らの一行は全国各地をくまなく回り、北極星の高度を測り、その土地の緯度を計測するという作業を続けるうち、公家が司る暦のズレに気づくことになるのだが・・・。
 
 映画化が発表された段階ではそれほど食指は動かなかったが、
夏前頃から始められた劇場予告編を観て、本編を観てもいいかなと思い始めた。
画面から窺えるスケール感と久石譲の音楽が上手にシンクロして、水準以上の出来であることが直感されたからだ。
映画を観終わった後の感想は予告編で感じた水準を上回るものではなかったが、
それを残念に思うほど悪い映画ではなかった。
たまに琴線を刺激される場面もあったが、北極地探索をともに旅する伊藤重忠、建部伝内を演ずる岸部一徳と笹野高史の飄々としたやり取りで笑わせる。
こういう脇の役を光らせることで映画の厚みが何倍にも増すという好例だ。
総じて原作の面白さを丁寧に拾っていった滝田としても、無難に職業監督の役割を全う出来たということだろう。

 惜しむらくは「時間」をテーマにしながら、映画の中の「時間」がストーリー上の「時間」とが噛み合っていなかったことか。
北斗七星が北極星の周りを一巡する時間や、日や月が翳る「蝕」の間隔がかなり拙速な印象をもつ。
これは映画のテーマとかかわってくることなので、その時間軸の同期には配慮してほしかった。
早い話、成長物語なのだから、歳月というものをもっとわかりやすく見せてもよかったのではないか。
実は原作を読み終わって映画化を確信しながら、
一年かけて大河ドラマとして放送しても面白いのではないかと思ったくらいだ。

 安井算哲に岡田準、妻のえんに宮崎あおい。
他にも保科正之に松本幸四郎、水戸光圀に中井貴一、関孝和に市川猿之助、敵役の宮栖川友麿に市川染五郎助など主役級が顔を揃える。
絶好調の岡田は、やや時代劇の主役としてはマスクのバタ臭さが気にならないでもなかったが、それをうまく補ったのが低身長と、宮崎あおいの巧みな受けか。
うん、彼女はいい。同じく本屋大賞受賞の原作 『舟を編む』 でも抜群の内助の功を発揮することだろう。
憎々しいお公家を演じた市川染五郎も特筆すべき。こういうのが梨園の底力なのだろう。



2012.10.13 TOHOシネマズららぽーと横浜



author:ZAto, category:映画, 03:06
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