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中島みゆき 『夜会 Vol.17 2/2 』 〜赤坂ACTシアター
 
     冷たい雨 降りしきる赤坂に 歌姫の歌うを聴きにゆく・・・
   
中島みゆき「夜会VOL.17」 四年連続。すっかり晩秋初冬の吉例行事となった中島みゆき公演から既に数日が経過してしまった。
去年はツアーコンサートで今年は『夜会』。
こういうサイクルもなかなか乙で、四年続けばこういうめぐりにもなるのだろう。
今にして思えば、レコードだけで中島さんに浸っていた時間の何と勿体なかったことか。
歌の聴きはじめこそ古いが、巷の筋金入りと達とは比べるべくもなく私の知識は深くない。
過去の公演記録を読み返すたびに「はぁ」と溜め息をついてしまうのだが、そんな思いを知ってか知らずか(いや知っているはずはないが)、このたびの『夜会』は1995年と97年に上演された『2/2』の再々演となった。

     彼と私ともう1人。
     どこかに“それ”は居る。
     圭を愛することを自分の幸福として生きたい、
     そう願う気持ちが、
     つのればつのるほど、“それ”は莉花の中から
     凶悪な力を増大させながら正体を顕して来た---
     舞台版、小説版、映画版を経て、
     あの「2/2」が21世紀へ蘇る。

 コンサートでもない、演劇でもない、ミュージカルでもない「言葉の実験劇場」。
記録によれば、この『2/2』から『夜会』は全曲が舞台書き下ろしになったのだという。
それは『夜会』の舞台を観れば既成曲で構成するのに限界があったことはよくわかる。
シンボルとして通奏低音のように高々と歌いあげる名曲『二雙の舟』は別として、演目と楽曲が常に背中合わせにあることによって舞台はひとつの方向性へと進行していく。


 主人公の莉花と、自分のせいで生まれてこなかった双子の姉の茉莉。
莉花は常に茉莉の影に怯え、恋人との逢瀬の途中にも茉莉が現われて狂乱する。
前回の『今晩屋』同様にまったくの予備知識もなく観たステージなので、私は莉花の心象の中に茉莉がいるものだと思っていたのだが、解説によるとはっきりと「多重人格」と書かれていた。
しかし鏡に映っては莉花を追い詰めていく茉莉という関係性にこだわりたいとは思った。
莉花は震えるほど茉莉の存在に意識し、その影を自覚しているのだから多重人格者のそれとは違うように思うのだがどうだろう。
茉莉への贖罪の思いが募った挙句にせめて莉花が出来ることは、恋人の圭からの逃避だ。
莉花はベトナムへと旅に出る。どうせ茉莉の呪縛からは逃れられないのなら、恋人に辛い思いをさせないことを選ぶ。
そして恋人・圭を演じるコビヤマ洋一が懸命に莉花の後を追う。
荒れた大海原をさまようように遂に莉花の過去の秘密に辿り着く。
このあたりの展開は観念一辺倒だった前回の『今晩屋』と違い、ミステリーテイストでわかりやすく、映像を使った舞台演出もなかなか凝っている。
しかしここまでの展開では中島さんの色が薄い印象もあった。
一途に追いかける圭の歌声の方が逃げる莉花よりも力強く感じてしまうのだ。
男の声がステージに鳴り響くのを聴きながら、今ひとつ中島さんの声が入ってこない。
正直言うと前半が終了して、幕間の時間で煙草をふかしながら私はやや焦燥感を募らせていたように思う。

 20分の休憩の後、ステージは一気に中島みゆきワールドが全開となる。
二階席だったこともあり、オーケストラボックスの瀬尾一三の指揮などが見て取れたのだが、恥ずかしながら舞台にセリがあるのがわからなかったこともあって、いきなり巨大な竹船に乗った中島さんが現れたときにはど肝を抜かれてしまった。
そこで切々と滔々と歌われる名曲『紅い河』。
♪ 流れゆけ 流れゆけ あの人まで  さかのぼれ さかのぼれ あの人まで〜
異国情緒満点の曲のスケールもさることながら、いよいよ夜会が夜会らしい本領を見せてきたのではないか。
そしてベトナムのホテルでの圧巻のクライマックス。
植野葉子の莉花と中島さんの茉莉の入れ替わりで初見の私は完全に騙されたが、こういう「騙され」は遅れてきた『夜会』ファンであり、小説やDVDで勉強もしないという初見の怠け者だけに許された特権ではある。
とにかくクライマックスは『目撃者の証言』 『7月のジャスミン』 『幸せになりなさい』 『二雙の舟』 『恋人よ我に帰れ』とたたみかけ、怒涛の熱唱で圧倒してくる。
その真っ赤な衣装が神々しくもあり、痛々しくもある。

 私は『夜会』の鑑賞後はいつも「解釈」を放棄してきた。
正確にいえば「解釈」を述べるほど消化できてもいないのだが、「解釈」をしながら舞台を観るなどという器用なことはとても出来ない。
カーテンコールで「今年は、日本も世界も、生き物が踏んだり蹴ったりの年でした。2012年はほんの少しでも良い年になりますように」と挨拶で締めた中島さん。
産経新聞に載っていたレビューでは「全体から感じたのは、死者から託された「生きろ」というメッセージだ。中島がなぜこの物語を東日本大震災後の日本で再演したのか、その理由が最終幕に凝縮されているように感じた」とあった。
・・・なるほど、そういうことなのかもしれない。



2010.12.1 赤坂ACTシアター


author:ZAto, category:舞台・ステージ, 09:31
comments(4), trackbacks(0), pookmark
Comment
ZAtoさん、こんばんは。というか、おはようございます。

ご無沙汰してます。
先日NHKで「夜会」を紹介してた番組をたまたま見ました。
なんとも激しそうでした(笑)
ああ、ライブはいいなぁ〜!って思いました。
お芝居でもコンサートでも落語でも何でもいいのでライブに行きたいな〜って。
今年はちょっとライブから遠ざかってるんですが、ときどき生舞台を観てないと、禁断症状が起きそうです(汗)

12月って別名『極月』と呼ぶそうですね。なんだか寒そうな呼び方です(笑)
今年も残りわずか、風邪などひかれませんようにね〜。
菊, 2011/12/27 4:07 AM
菊さんこんばんは〜。お久しぶりです。

いろいろとご苦労なさっていることはブログで拝見しております。
本当にお疲れさまです。

そうですか12月を「極月」といいますか。
「ごくげつ」と読むのでしょうか・・・って、エライ時間までお仕事なさってましたね。
こんな駄文でも息抜きできたならば幸いです。

>先日NHKで「夜会」を紹介してた番組をたまたま見ました。なんとも激しそうでした(笑)

おおっ、NHKでやってましたか。それは見逃した!(痛恨)
そうです『夜会』の舞台はなかなか激しいです。
還暦を迎えるおばさんが舞台狭しと跳ね回り、泣き、叫び、悶え、絶唱します(爆)。

そうですね生舞台は前もってチケットを買って、自分の時間を役者なりアーティストに捧げると同時に、
彼らから感動を貰いに行くわけですから、リモコンでテレビをつけるのとはわけが違いますよね。

菊さんが禁断症状から抜けられる時間が作れることを願います。「盟時間大切」です(笑)。
でもって、来年こそは関西に遊びに行こうかと思ってますので、その時は皆さんに声を掛けさせてもらいます。
zato, 2011/12/27 10:49 PM
>ザトさん、こんにちわ。

御無沙汰してまする。
実は内緒で日めくりを読ませてもらってました。
もうばらしたので来年からは堂々と読む。
いやぁ、ザトさんの文章は読みやすい。
尊敬する。
と、言ってもゴマをすってる訳ではない。

>先日NHKで「夜会」を紹介してた番組をたまたま見ました。なんとも激しそうでした(笑)
ん〜TVっ子の私が見逃したとは実に失態です。
番組表は常にチェックしてるんだがなぁ。
来年からは隅々までチェックするよう心がけようと、日記に書くつもり…。

あっ、ブログ書いてたのばれたみたいね。
(*^o^*)
しんじろうって検索すればヒットするから仕方ないのかもねぇ。
素人なんでね、本気でやろうとは思ってもなけど書くときは一気に書く。

今年は大変な年だったけど来年は良い年になれば本当にうれしいね。
西日本の人たちががれきを受け入れてくれるともっとうれしいけどね。
来年もよろしくね。
身体を労わって残り少ない2011年を過ごしてくださいな。
また来年もよろしくね。
しんじろう, 2011/12/31 2:43 PM
しん兄ィこんにちは。

大掃除やってますか。
「日めくり」は別に隠しているわけではないのでいつでもどうぞ(笑)。
まあコメント欄もなく言いっ放しのページですけど。

しん兄ィのブログはたまたま「雑途往還」で検索しているときに見つけました。
身に余る暖かいお言葉に木に昇ってしまいそうな勢いです。
ブログの再開をお待ちしております。

しかしウチのチームは居る人間を引き留めるのに精根尽き果てたか、なかなか動きません。
和田新監督が生え抜きの若手を一年間じっくりと見極める方針ならばいいのですけど。

まあ、それはそれとして一年間ありがとうございました。
来年もよろしくです。
zato, 2011/12/31 3:13 PM









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