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映画 『 スマグラー おまえの未来を運べ 』
 
 死体を運搬して処理するスマグラーという職業。
役者志望で300万の借金を抱えたフリーターの青年・砧。
彼は闇金の斡旋で日当5万円のアンダーグラウンドな世界に入り込む。
この砧という青年がこの映画で唯一、(俗世間的に)まともな男。
あとは出演者のほぼ全員がホットにクールにキレまくっている。

スマグラー.jpg

 全編にほとばしる流血とバイオレンス、そして死体の山。
螺子の外れた男たちの脳天が陥没し、画面狭しと飛び散る大量の涎。
スタイリッシュではあるのだが、あまりに作り込みすぎて笑ってしまう。
石井克人のほどほどのところで手を打たない姿勢には常に期待してしまうのだが、
新作の『スマグラー』も期待に違わぬキッチュな出来栄えとなった。
しかし十人が観て全員が面白いという映画でもない。
今回の新作は、万人受けしたと思われる『鮫肌男と桃尻女』や『Party7』より、“顧客満足度”は低いのかもしれない。

 まず“キレ”という部分に於いては左に中国人マフィアの殺し屋・安藤政信がいて、右に暴力団幹部の高嶋政宏がいる。
この二人をキレの両極に据え、真ん中に砧を演じた妻夫木聡を置く。
その周囲をクールだが実はかなりぶっ飛んでいる永瀬正敏、満島ひかり、松雪泰子で固め、さらに石井克人ではレギュラーの我修院達也と島田洋八が賑わかすという構造。
そう、これは最後の最後に砧までキレてしまう過程を描いた映画ともいえるし、もうひとりの“キレ”キャラを獲得していく映画ともいえる。

 中国の殺し屋・背骨を演じた安藤政信は、いかにもコミックが原作ですといわんばかりにヌンチャクを駆使して究極に近いキレのカッコ良さを披露していたが、それよりも何よりもサディスティックな拷問マニア(当たり前か)を演じた高嶋政宏の怪演は特筆ものではなかったか。
砧の頭に上着を被せてのハンマー打ち込みを皮切りに、火で真っ赤になったになった針で足の親指と人差し指の間を突き刺しながら狂喜する表情もさることながら、「クワイ河マーチ」の口笛とともにゲシュタポまがいの制服を着て、最後は紙おむつ姿で現れるという馬鹿馬鹿しさ。
高嶋の新境地というより、完全にリミッターが吹っ切れた狂いっぷりには、観ている方が「高嶋、大丈夫か?」と心配したくなってしまうほどだった。

 では石井克人がこの映画でどんなメッセージを投げかけたのだろうか。
この問いの答えは実に難しい。
映画作家というよりも映像クリエーターというのが石井克人のプロフィールだ。
今までの作品を見ても「この映像で何かを訴えたい」よりも「これをどう映像にして見せるか」に全力を傾け続けているように思う。
それぞれキャラクターのアクの強さといったらないのだが、前述の高嶋の怪演ならぬ狂演を見ると、ある意味では役者としての良識の限界を超えさせる才能が石井克人にはあるのかもしれない。
そう思うと今までの石井作品から浮かび上がってきたものは、映画そのものよりも映画作りのチームワークであったような気もする。

 惜しむらくは、高嶋政宏ワンマンショーのヒキが強すぎて、映画そのものの印象が拷問に持って行かれてしまったことだろうか。


2011.11.7 TOHOシネマズららぽーと横浜



author:ZAto, category:映画, 20:20
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