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本当のパンデミックとは


 月が変わったのを機会に、先月5月のことを書いておきたい。

 2009年5月は列島が新型インフルエンザで振り回されて終った感がある。
最初に「豚インフルエンザ」として耳に飛びこんできたのが4月の終りくらい。
ニュースが出た直後から神奈川県某市では所員が駅前でビラを配るなどして対応。
何せ私の住む地域には高座豚というブランドがある。
まず、ブタとインフルエンザを早々に切り離し、風評被害を食い止めたのは成功だった。
WHOが警戒レベルをフェーズ4から5に引き上げると、しばらくは海外感染者のニュースが報じられ、厚労省が空港、港などで水際作戦を敢行し、舛添要一がテレビに映らない日はなく、その間、海外渡航者の検疫で陽性反応が出たの、出ないの、新型か否かみたいな状態が約一週間。
ここまでの対応策はそこそこ機能していたように思う。いや思っていた。
おかしくなってきたのが、国内に保菌者が現れ、情報が加速度的にひとり歩きし始めたあたりからというのが私の認識としてある。

 「横浜市内の高校生が国内初の新型インフルエンザ感染疑い」。
5月1日のことである。
以下は神奈川新聞「 “社会の暗部”が噴出」という記事からの抜粋。

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「横浜市内の高校生が国内初の新型インフルエンザ感染疑い」。今月一日未明、厚生労働省が緊急会見で明らかにした。「疑い」が晴れたのは、十六時間後。その間、学校は「パニック」に見舞われた。あれから一カ月。生徒を思い、安堵(あんど)の涙を流した校長の胸にはしかし、言い得ぬ恐れが深く沈んだままだ。
あの日、目の当たりにしたのは、すぐそこに潜む社会の暗部-。
 
■犯人捜し

 校長は、いまも不思議に思っていることがある。

 「厚労省の発表は校名を伏せていた。それがなぜ広まったのか」

 舛添要一厚労相が会見場に姿を見せたのは午前1時35分。その20分前、インターネットの匿名掲示板では、すでに”犯人捜し”が始まっていた。

 “ 「横浜の私立高校」「4月10日から25日にカナダへ修学旅行」 ”
 テレビの速報の断片的な情報を基に、書き込みが重ねられた。「日程で特定できそうだな」。そして225件目。「この時期カナダは○○○○(学校名)だろ」。会見が始まる5分前のことだった。

 「その10分後です。報道機関から(校長の)自宅に電話がかかってきた。それからほぼ10分おきに3、4件。私の電話番号まで、どこで調べたのでしょうか」

■パニック

 校長がタクシーを飛ばして学校に駆け付けると、そこにはすでに報道陣約40人が詰め掛けていた。アンテナを立てた中継車、上空にはヘリコプター。駆け付ける教員を、待ち構えたカメラが追った。

 「まさにパニックだった」

 明けて朝。学校周辺の薬局からマスクが消えた。「生徒がどの交通機関を使っていたか教えろ。うつされていたらどうするんだ」。電話口で声を荒らげる、近隣に住むという匿名の男性。

 「業者が調べたところ、学校のホームページに一時間で1030万件のアクセスが殺到し、パンクしていた。200万人がつながらない状態だったそうです」

 模擬試験に申し込んだ生徒について、受験業者から「外出自粛なら受けに来ませんよね。代金は返しますから」と、念押しするような連絡が入った。

■抗議

 「教員によると、他校の部活動の顧問から『大会でおたくと対戦することになったら、うちは棄権する』と言われたそうです」

 暗に学校を非難する圧力が、教育関係者からもかけられた。

 生徒の「疑い」は晴れたが、同様に北米研修に参加した残りの553人の健康に不安があるとして、休校が決まった。問題は部活動だった。大会に出られない3年生は、「最後の試合」を迎えることなく引退することになる。

 「一部の生徒は泣きながら校長室に直談判にやってきた。保護者もです。つらかったが、周囲の状況を考えても(出場という)選択の余地はなかった」

 12日、校長はホームページにメッセージを載せた。「声を大きくして訴えたい。すべての生徒、ご家族、先生方、学校そのものが被害者だったことを」

 疑いの段階で詳細を公表した厚労省と横浜市、過熱した報道、ネットを介してパニックを増幅させた社会への、ささやかな抗議だった。
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 風評被害は当事者にしか実感できないのは当たり前のことなのだが、
たかが16時間で解決した案件にして、風評が一気に雪崩れ込む様は本当に怖い。
日々、ネットに書き込まれる膨大な匿名情報があり、それが検索されて連鎖していく。
上記の案件で、ネットに学校名が出てから10分後に校長の自宅の電話が鳴り、学校までタクシーを飛ばしたら既にマスコミがごった返し、上空にはヘリコプター。
たまたまこの中継をテレビで見ていた人は、この現場が風評などとは考えないだろう。
もちろん恐るべきことは「情報が無い」という状態なのだろうが、無ければ無いで作られていくのがネット社会というものか。
そもそもマスコミと近所のおっさんに情報のタイムラグがほとんど無いというのが凄い。
もうO157のカイワレ大根や所沢のダイオキシン騒動とは時代が違っているということか。

 マスコミの報道がネットの後追いになってしまうと、我々に情報の取捨選択は不可能だ。
気持ち悪いのは、真贋はともかく情報媒体として周回遅れにならざる得ないマスコミの質が落ちてきたことと思われること。
ニュースやワイドショーで散々と不安を煽りながら、最後にコメンテーターが「過剰にならないことが大切ですね」と結ぶ。アホ丸出しではなかろうか。
現代は「情報は連鎖的に暴走するもの」という前提があるのだから、マスコミはそれを引き受けて、正確なものを抽出して我々に提示する責務がある。
厚労省や自治体の対応の不備はマスコミが指摘する。しかしそのマスコミがセンセーショナリズムに傾いていては誰が後を引き受けるというのか。

 私は「パンデミック」という言葉をこのたびの新型インフルエンザ騒動で初めて知った。
さらに段階があって、エンデミック→エピデミック→パンデミックと進むということ。

 【エンデミック】(地域流行)
 地域的に狭い範囲に限定され、患者数も比較的少なく、拡大のスピードも比較的遅い状態。この段 階ではまだ、いわゆる「流行」とは見なされないこともあり、風土病もエンデミックの一種に当たる。

 【エピデミック】(流行)
 感染範囲や患者数の規模が拡大(アウトブレイク)したもの。比較的広い(国内〜数カ国を含む)一定の範囲で、多くの患者が発生する。

 【パンデミック】(汎発流行)
 さらに流行の規模が大きくなり、複数の国や地域に亘って(=世界的、汎発的に)、さらに多くの患者が発生するもの。 (Wikipedia)


 …この「患者」の部分を「風評」と書き換えてもよいのではないか。





author:ZAto, category:時事, 23:46
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